獄炎の魔王31話感想

今更ながら31話感想

地底魔城戦法

魔物の軍勢でアバンのパーティを闘技場に誘い出すガンガディア。
これは不死騎団長になったヒュンケルも使っていた使っていた手ですね。

ヒュンケルはどこかで教わってたんですかねえ…。

闘技場

ダイ・ポップとヒュンケルが戦った地底魔城の闘技場がガンガディアとの決戦の舞台です。

ハドラー様の御前で力を披露する事を目的に作られたらしいので、ガンガディアの決戦にも格好のステージではあるのですが、
ただ、ここだとベタンが使えてしまうんですよね。
ガンガディアに対策はあるのか…。



これは失礼

「これは失礼、君たち人間にとっては血塗られた死の舞台だな」という台詞は、ガンガディア初登場時の「人間側としての君の主張の正しさは認める」とかにも通じる、(挑発とはいえ)魔族的な「相手の視点に立って思考する事はできるけど人間自体は蔑んでいる」という感性が色濃く出ていていいですね。

クロコダインも獄炎時点では余裕でレイシストでしたし、魔族は「力が全てだからそれで語れ」が基本なんでしょうね。

俺に任せて先に行け

ここで再び「全ての戦いを勇者のためにせよ」が効果を発揮します。
アバンを進ませる事が最終目標、ならばガンガディアと戦うのはマトリフ一人。
火炎系呪文でガンガディアの足を止めさせた隙に他の三人を前進させます。

ところでここで使ってたのは両手とはいえメラゾーマ五連発みたいな感じに見えるんですが、実際フィンガーフレアボムズに相当するような技なんでしょうか?
作劇の都合上勇者アバンではインフレした大魔王軍レベルの戦いはそこまで頻繁にできないのですが、流石にここは「禁呪まがいの術」が出てくるレベルなんですかね?
ガンガディアも両手で相殺していますから、彼もフレイザードと呪文戦はできうるのかも?

俺を踏み台にした!?

闘技場の客席に上がる際、重装備でパワータイプのロカだけは自力で跳び上がれないのでレイラが先に登って上から引っ張り上げてあげる必要があるわけですが、その先に登る際ナチュラルにロカを踏み台にしてて吹きました。

夫婦でツーカーなのはわかるんですが、アバンみたいに自力で登るんじゃいけなかったのか…?(それだと遅いとか?)

ガンガディアの表情から咄嗟にマトリフに盾を与えるアバン。
盾がイオナズン対策になり得ると言う私の考察は外れてしまいましたが、部分的には当たりでした。

マトリフVSガンガディア

ついに来てしまいました、マトリフVSガンガディアの最終決戦の時。
勇者アバン二大「愛されキャラでありながら本編までに死亡が確定しているキャラ」の片割れであるガンガディア、その最後の戦い、即ちその最期の時です。
死なないでほしいと思う反面、せめて高潔に戦い抜いて死んでほしいと満足に思わされます。
気分はミストバーンですね。

ガンガディアはマトリフとの一対一の対決を実現するためにこの展開を誘導していたようです。
…ますます気分はミストバーン

……そうだな何から話そう?


素晴らしい名台詞。
「あなたに話したいことが沢山あるんだ」と言外に告げてくる台詞です。
その後もずっと親友か恋人かってくらい親しげに話しかけてきてますし、敵ではあるけど本当に思い焦がれた相手なんだなというのが伝わって来ます。

センスの無い奴には一生できねえ

マトリフに比べれば圧倒的に時間的余裕がなかったとはいえ、ガンガディアはメラとヒャドの魔力を合わせた融合爆発をモノにする事は出来ませんでした。
コントロール以前に爆発を再現する事自体ができず、「ずっとこんな感じ」だと呪文でボロボロになった手を晒します。
あのガンガディアが一度としてスパークすら起こせなかったという事実は、本編でマトリフがポップに語った「センスの無い奴には一生できねえ」がとても重い言葉であったことを感じさせますね。ガンガディア程の努力家が何百回と試みてできないという事は、素養の時点での足切りは間違いなくあると言わざるを得ません。「センスがある」の要求ラインが高すぎる。
同時に同系統とはいえガンガディアが両手で呪文を同時に扱うことまでは出来ている事がわかり、彼の秀才ぶりが伝わって来ます。

いいね憧れる

いいね憧れる。
自分が生み出した呪文に名をつけられる者はこの世にも限られる……。

自分に無いものに対する羨望が滲み出た名セリフです。
今回のガンガディア名セリフ多すぎる。

告白

…………正直に告白しよう。
私はあなたを尊敬している。
敵であり人間でありながら
あなたの知性と魔力は私の憧れ理想像だった。

マトリフへの尊敬、憧れを告白するガンガディア。
前述の魔族特有の人間蔑視もそうなんですが、
人間に対して敵である魔王軍の幹部が敬意を抱くという事はまさに異常な、はっきり言って許されない事であり、本当の意味で「秘めた思い」の告白です。
今回ガンガディアは一貫してマトリフを「あなた」と呼んでおり、彼への敬意を表現する事に余念がありません。

なぜ告白したのか

今回ガンガディアはマトリフにすべきではない告白をし、更に一貫してあなたと呼んで敬意を表現し続けていました。
しかしそれが何故かというと、彼は魔王軍の幹部として絶対にマトリフを殺すつもりだからでは無いかと思われます。
マトリフの超呪文であれ、自らの選んだ最強の呪文であれ、どちらも必殺の威力を持ち、この戦いが終わればどちらかは必ず死んで二人は二度と言葉を交わす事は出来ない。
だから殺す前にどうしても一言告げておきたかったのではないでしょうか。
実際この会話の後は彼は殺意に満ちた攻撃を繰り出し続けています。

だが残念だ

…………だが残念だ
あなたと自分の能力だけで戦いたかった
だが私は魔王軍の幹部 ハドラー様のために勝利を手にしなくてはならん
冷静に判断し決断した
私の今の魔力ではあなたに太刀打ちできない
この禁断の書に頼る以外勝利はあり得ない!

己の敬意を受け入れ決闘を受諾してくれたマトリフに対して、
歯軋りしながら己の無力と魔法戦の放棄を告げるガンガディア。
本当は、たとえ敗色濃厚としても自分の憧れた魔法使いとしての戦いでマトリフとして勝負がしたかった。
或いはもっと修業を積む事ができていれば自力で対抗しえたかもしれない。
しかし魔王軍の幹部として己が果たすべき役割は「満足のいく勝負」や「将来における正々堂々の勝負」を為す事ではなく「今この場での、ハドラー様のための確実な勝利」を得る事。
だから戦い方にこだわる事はしない、どんなに嫌な方法でもどんなに醜くても、勝てる手を選ぶ。

もうこの判断ができる事自体がガンガディアが大賢者である事の証明みたいなものですよね。
そのハドラー様はダイの大冒険中盤まで勝ち方にこだわり続けて随分迷走するわけですが、ガンガディアはその凄まじい知性と意思力によって、この時点で決断したわけです。
凄い男です。


魔王軍としての立場を語る際にハドラーのための貴賓席が映るのが細かいですね。

ドラ!


ガンガディアの切り札はバイキルトマホカンタだろうと言われていましたが、なんとそのどちらでもなく、魔獣への変身を行うオリジナル呪文「ドラ」です。
しかしその姿はどこかで見覚えがあります。多分シリーズを知っている誰もが知っているあの生物。

あなたを上回る体力!パワー!
それで押し続ければ呪文を作る事は出来ない!

ドゴラム!

呪文合成の隙を与えないために力で押しまくるガンガディアに対し、その動きを止めるべくヒャダルコを放つマトリフ。
しかしガンガディアは「ドゴラム」によってさらに変身を進め、口から吐き出した炎で呪文を掻き消します。
巨大な爪、二本の角、裂けた口、吐き出される炎。
ガンガディアは言います。

ここまでは試した 最後のひとつは初めてだ
これが一番私を強くできる呪文だとは知っていた
それでもなかなか使う気にはなれなかった
私の理想とは真逆の戦い方になるからだ
だが!私は自分を捨てても今ここであなたを倒さなければならない!

見たまえ!己を捨てて獣と化した我が姿を!

ド・ラ・ゴ・ラ・ム!!


ガンガディアの切り札はそう、最強の生物ドラゴンへの変身を可能とする火竜変化呪文ドラゴラムでした。
ダイの大冒険のドラゴラムは変身元となった魔法使いの能力に応じて強さが変わるらしく、ガンガディアが変じたドラゴンは凄まじいパワーを発揮しマトリフを圧倒します。
マトリフはドラゴンの猛攻を前にとてもメドローアを作る隙が無く、
動きを止めようにももはやヒャドではノーダメージ*1
しかも彼の吐く炎はブレスであって魔法力ではないのでそちらにヒャドを合わせて誘爆させる事もできず、
距離を離そうにもドラゴンの飛翔速度はマトリフのトベルーラを上回り、
さらに知性はガンガディアのままなので、頼みの綱のベタンも*2使用自体させてもらえません。

その戦いぶりはガンガディアの理想とするスマートな姿ではなく、使っているのは自慢としていた器用な魔法の技でも、理想としていたオリジナルの超呪文でもありません。


それどころか変身を重ねる程に忌み嫌っていた暴力の怪物としての要素が強まっていき、最後にはとうとう破壊の化身であるドラゴンになってしまいました。
しかしその代償に得たものもまた大きい。マトリフを遥かに上回るパワーに、マトリフの対抗策全てを摘み取るスペックと判断力を上乗せしたドラゴンガンガディアはマトリフの反撃を悉く叩き潰し絶望の淵に追い込みます。完全なるメタです。
この選択はウロドの決闘の際のルーラパンチ同様、魔法の技でなく己が勝っている部分=力での勝利を追及する最適解と言えるでしょう。

火竜ガンガディア


ドラゴラムガンガディアの戦い方へのこだわりを捨てて勝利のために全てを費やす姿勢は超魔ハドラーと同じであり、ガンガディアは既にその域に達していたと言えます。
元々魔法使いとしての力量に差がある描写は多かったわけですが、マトリフはマジでバーンパレスクラスの人材であり、恐らく総合的には軍団長にも届かないガンガディアがそんなのと戦うためには相当の無茶をするしかないんですよね。
ドラゴラムを選んだ彼の判断は完全に正しく、冷静にドラゴラムを選択できたことが彼の「知性」の証明と言えるでしょう。
また基本的に知性の無いドラゴンしか存在しないダイの大冒険世界においてガンガディアの知性を持つドラゴンと言うのはドラゴンとしては最強クラスであり、彼でなければ実現できない究極のバトルスタイルであるとも言えます。
(個人的に、ガンガディアがパワー方面に振り切らざるを得ないだろうなという予想はしていたのですが、そのために知性まで手放す事になるのではないかと恐れていましたので、彼の尊厳が保たれる形の振り切り方で安心しました)

逃げるわけにはいかねえ

絶望の中走馬灯でカノンと再会するマトリフ。
「死ぬにはまだ早い、空が見えてるんだからルーラで逃げればいい」と言うカノンに対して、マトリフは「絶対にここで勝たなければならない、そうでなければアバンたちがやられてしまうし、プライドを捨ててまで挑んでくれたガンガディアのためにも逃げる事はできない」と答えます。
流石ポップの師匠*3ですね。
カノンはその決意と変化を認め「負けたなら涙を拭いてやる」とマトリフに手を貸し再度送り出しました。(なんか嫁さんと言うより母ちゃんみたいだな…)
マトリフ一人では逃げる事もなかったでしょうが多分折れたままだったので、この食いしばりが出たのはカノンさんの恩恵です。
カノンは1巻だけ突然生えてきたヒロインなのですが、見事なキャラ造形だと思わされますね。
こういうのを尊いというのでしょうか。

カールの盾

一対一の勝負では完全に勝っていたガンガディアですが、マトリフにアバンの残した盾でブレスを防がれ勝機を逃します。
あの盾はイオナズン対策じゃなくてブレス対策だったんですねぇ。
確かに地底魔城突入前にブレスを弾いてはいたのですが、アポロとフレイザードがフバーハメラゾーマを防ぐ防がないという勝負をしていたので、ブレスの炎と魔法の炎に区別があると思っていなかったんですが、突然正気に返られてびっくりしました。

ガンガディアの孤独


この辺ガンガディアは孤独だなと思わされます。
同族に彼を理解できるものはおらず、自らを買ってくれていたハドラー様とも最近は妙にすれ違っており、それが勝敗を分けるのだと思うと酷な話です。

たった一つ勝る武器

辛うじて生き残ったマトリフは「自分にもたった一つお前に勝る武器があるのを忘れていた」と勝利宣言します。
曰く彼の最後の武器はその「頭脳」。
化かし合いは俺の勝ちだフラグですかね。

逆転要因予想

マトリフは頭脳が切り札だと言っていましたが、個人的にはそれ以外にガンガディア側のドラゴラムを使った事による不慣れみたいなものも影響するのではないかなと思っていたりします。
例えばアバンはドラゴラムで大量の魔法力を消費してしまった事がハドラーとの決闘に響いていましたし。
ドラゴンに知恵がない事の要因として獣性が強まって判断力を失う…と言った事も考えられますが彼の尊厳のためにそっちはあまりあって欲しくない。
まあ最終的には(せめて)、自分がついに成し得なかった至高の極大呪文を成功させるマトリフの姿を見て感激しながら死んでくれればいいのですが…。

キギロ来ないかな

流石に露骨に死んでそうではあったんですが、「次に誰か来たら相手するのはお前ら夫婦」と言う事でしたので、バルトス以外に誰かを相手するとなるとキギロな気がするんですよね。
最後「死にたくない!」と念じて崩れていきましたし、あるような気がします。

*1:元々ドゴラムの時点で掻き消され通じていなかったのですが、とうとう防ぐ必要すらなくなったようです

*2:並のドラゴン相手なら起死回生の策となるのですが

*3:そしてまぞっほの兄弟子