世界樹の迷宮Ⅱコミカライズ 六花の少女はいいぞ

世界樹の迷宮リマスター発売おめでとうございます。
ポケモンにうつつを抜かしている間に発売日を迎えてしまいやや戸惑っている所もありますが再び懐かしい迷宮に挑むことができるという事で喜びに胸を高鳴らせております。

さてこのリマスター版発売に合わせてSQ2の名コミカライズである「世界樹の迷宮Ⅱ~六花の少女~」の電子版が発売されました。


これがめちゃめちゃめちゃめちゃ面白いので古のボウケンシャーには是非読んで欲しいなと思い記事をしたためています。
私はこれでも過去には世界樹ブログを運営していたこともあり(諸事情により閉鎖)もう15年以上の年季の入ったボウケンシャーなのですが、そこそこの数がある各コミカライズ・ノベライズなども集めていた私が一番好きなのが「この六花の少女」です。もちろん今回も秒で購入しました。
ぶっちゃけ電子化15年以上待ったし知り合いに物理書籍で布教してた事さえある。
という事で以下六花の少女の好きな所を心の赴くままに書き連ねていきますので是非各ショップにてお買い求めください。

世界樹の迷宮Ⅱ~六花の少女~のここが素晴らしい!

初期世界樹の空気が強い!

どんな冒険者も殺されれば死に、どんな魔物も殺せば死ぬ

世界樹の迷宮シリーズはなかなか歴史が長く、純粋なナンバリングだけでもⅠ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ、Ⅹと存在する上、新世界樹シリーズも1、2と出ており、その十余年という期間の中で段々とバランスや世界観が変化していったところがあります。
個人的に世界観の変化として特に大きいなと思うのが人が死ぬかどうかですね。
別に冒険者は死ぬべきとか死人を出して悲壮感を演出しろ言っているわけではなく、単純に傾向の変化として、初期作においてはネームドであるか否かを問わず冒険者というのは結構ポンポン死んでいたものが、後期作になるにつれて(4は把握していませんが)死ななくなっていった印象があります。
死ななくなっていったというか、迷宮自体が「人が死ぬ場所」ではなくなっていったというか。

【読み返したら愚痴っぽくなっててアレだったので閉じてます】 
例えばⅩにおける冒険者カップルのロブとカリスは明らかにⅢにおける冒険者カップルであるムロツミのアガタとカナエを意識したキャラクターであり、
アガタとカナエは1層の時点で見捨てて接点を断っておかない限り、こちらがどう接してもどちらかが死んでしまうイベントが展開されるキャラクターだったのですが、
ロブとカリスの方は無謀に無謀を重ね続ける立ち振る舞いに反し、こちらが何を選ぼうが絶対に死ぬ事はなく、ハッピーエンドしかありません。
モブキャラクターにおいても、初期の衛兵などは万全を期しても雑に死んでいたのに対して、Xでは兵隊が仲間の装備を鎖でその辺に括り付ける悪戯をして特に人死にも出ない…みたいなイベントがザラにあったり。
プレイヤーが体験する迷宮内小イベント*1も後期のものになるほどかなり「気軽に遊んでみる」という性質のものが多く*2
全体的に迷宮から「シビアさ」が除かれていった印象です。「全力を尽くしてもダメな時は死ぬ」異界という感じではなくなっていった。
まあこれ自体は好みの問題でありどちらが一方的に良いというものではないと思うのですが、

どちらかと言えば私は初期世界樹の「どんな敵も殺せば死ぬ」「どんな冒険者も殺されれば死ぬ」といった世界観と、「それでも迷宮に挑む冒険者」が好きでしたのでゲーム体験の延長としてのコミカライズにもそうであってほしいなと思っている所があります。
そういった点において、六花の少女は(もちろん「そもそもⅡまでしか出ていなかった時期の漫画である」という事もあるでしょうが)、「殺されたら死ぬから殺されないために殺す世界樹」を誠実に描いており、非常に好印象でした。
  

もちろん皆ある程度漫画的な身体能力は持っているのですが、基本的には説明のつく事柄しか起きないのもいい所で、
主人公マナリィのパーティは最初から実力者揃いでかなりのペースで迷宮を進んではいます*3が、それにもきちんと理由が与えられており、

例えばマナリィが強いのは引退した冒険者の元で修業を積んだため*4*5
相棒のクロウドが強いのは「元は」深層を探索していたベテランだったため、
パーティの初速が速かったのはマナリィが師匠筋から当時のマップの写しを得ていたためで、
それほどのアドバンテージを持った上でもかなりの頻度で死にかけています。

種も仕掛けもある不思議

世界樹の迷宮は元々Ⅰの時点で序曲とか抜刀氷雪とか呪言といった不思議パワーのある世界ではありますが、基本はあくまでナウシカであり、あらゆる不思議の芸には「世界観なりのタネや仕掛けがある」という事が度々言及されていました。*6
例えば今は無きⅡの公式サイトでは他ゲームでの魔法使いに当たるアルケミスト錬金術のキャラ紹介において、

右腕に金属製の篭手をつけた男が、幾つかの袋と、金貨が積み上げられたテーブルを挟んで商人と取引をしている。
男が金貨を1枚、また1枚と積み上げて行き、
何枚目かの追加の金貨を積んだところで商人はようやく頷いた。商談が成立したようだ。
金を受け取った商人は袋を押しやると満面の笑みを浮かべて去っていった。
やれやれと言った感じで肩をすくめた男と君の目が合った。
男は、目の前の椅子を顎で指し示した。
「暇なら一杯付き合わないか?」
君は男の誘いに応じてもいいが、無駄な時間を費やしたくないというのなら立ち去ってもいい。

冒険者で賑わう町、ハイ・ラガードか…。
 困ったものだ。賑わうのは良いが、ここまで物価が上がってはな」
男はため息をついた。
「ご存知の通り、我々アルケミストは、敵の属性を見抜き、
 相反する属性の術式をぶつけることで最大の戦果を挙げる…。
 敵の属性を予測することは戦いにおいて重要だ。
 だが、術式を起動するためには、適切な触媒が必要不可欠なのだ。
 一仕事終えたのでしばらくはのんびりしようと思っていたのだが…
 触媒を仕入れるだけで蓄えが乏しくなる始末。
 これはまた新たな仕事を探し出さなくてなるまいな…。
 誰か私に気前良く報酬を払ってくれそうな雇い主を知らないだろうか」
アルケミストの技術に興味があるのなら声をかけてみてもいいだろう。
もう少し丈夫そうな仲間が欲しいなら他をあたったほうがよさそうだ。

といったゲームブック風の紹介文が与えられたりしています。
彼らの扱う術式は実態としては、ゲーム的にはやはり攻撃魔法なんですが、彼らにとってのそれらは超常現象ではなく、あくまで錬金術の英知によるものであるという説明がなされているんですね。
世界樹の迷宮において「不思議」とは、理解可能な、タネも仕掛けもある現象である…という世界観であるという事を表現しているとも言えます。
それは科学と呼ばれた力。

これについて六花の少女では「不思議にタネも仕掛けもある」事をきちんと表現しており、主人公マナリィはガンナーとして氷の出る弾丸アイスショットを使用しますが、そのアイスショットの原理は錬金術に由来し、それを扱えるのはマナリィが訓練されており高度な知識と調合技術を持っているからであるという説明がなされていました。

 
またパーティの回復役であるシノンは単純な外傷以外に疾病の治療ができたり、ちょっとしたドーピング*7を施す事ができたりもするのですが、これはⅠ、Ⅱでは回復職は治療師メディック巫医ドクトルマグスである事に由来し、彼らが「医術を修めた冒険者」であるという事を踏まえた描写になっているんですね。
彼らの回復スキルは祈りや想いの力ではなく、基本的に医療行為。

個人的に、この手のRPGモノは全ての事象を説明する必要は無い(むしろくどくならないように描写を絞る事にも相当の工夫が必要である)とは思うのですが、同時にこうした描写がちょっと挟まれるだけで世界の解像度がグッと上がり、空気感が伝わってくるので、そうしたディティールに凝ってくれるのは読んでいて嬉しい所でした。*8*9

ちなみに私は同じ「解像度」という理由でSSQ2の街開発も暮らしが垣間見られて好きだったりします。

キャラクターがいい

全体的にキャラクターがいいです。
登場人物は殆どがオリジナルキャラクターなのですが、それぞれがきちんと「冒険者」をしてくれています。
上でちらっと「それでも迷宮に挑む」という言葉を出しましたが、
当時の世界観では常に死と隣り合わせの迷宮で冒険者なんてやるのはやはり命知らずのバカであり、それなりの理由が無ければ迷宮には立ち入らないものです。
メイン級の冒険者四人*10にはそれぞれ冒険者となった理由が与えられており、まあ結局元をただせば全部ロマン寄りなので他人からすれば「そんな事?」みたいなものかもしれませんが、皆それに命を懸けています。

多少捻くれた見方をすると皆きちんと「冒険者になるような、冒険者なんかになってしまうような背景」を持っているとも言えるのかもしれません。(と言っても誰一人として悲観的な訳ではなく、それがまたよい)
  
その他の冒険者たちもきちんと迷宮探索という稼業に向き合っており、危険な迷宮でそれぞれ最善を尽くす事で勝ち進んだり、それでも及ばずに死んだりしています。
話を回すために都合のいい愚か者が出てきたりしない。すごい。
(まあ強いて言うならマナリィが割と無謀な愚か者ではある)(そもそも冒険者が全て愚か者というのはそう)


本編キャラとしてはハイラガード公女だけ展開上強めに人格を出してきますが、チョイ役なのにきちんと王族らしい矜持を示してくれるのでいいね👍と思っています。*11*12

シナリオがいい

六花の少女はあくまで「マナリィの冒険譚」であり、諸王の聖杯本編の展開とは特に関係がありません。(キマイラっぽいのは出てきますが別の人です)(製造元は同じかもしれない)*13
しかしそれ故に展開の制約なく、「ハイ・ラガード冒険者のありそうな冒険」を見る事ができます。
世界樹の迷宮の冒険」を見られる漫画。素晴らしいと思いませんか?
なおラスボス周りの展開は非常に「凍土に眠る永久の冷酷」*14と重なる部分が多く、多分あのクエストをモデルにしたのではないかなと思います。

バトルがいい

既に「死にそうになる」話を何度もしていますが、世界樹の迷宮なのでモンスターがちゃんと強いです。

モンスターにもモンスターなりの工夫と経験、必勝法があり、あの手この手でマナリィたちを脅かします。
一部の決着が詳細に描かれないのが惜しい所ではありますが、
強いモンスターに対するそれぞれの試行錯誤や、不意に訪れるファンブルと絶望、危機を察知する直感と言った冒険者あるあるが描かれており読んでいて楽しいです。
分断されてピンチのタイミングでクロウドがめっちゃ助けに来る事に気づくとちょっとフフってなる。

六花の少女本編外において

冒険者の絆

世界樹の迷宮2ではオリジナル版からブシドーとガンナーの依頼人が登場する「冒険者の絆」というクエストが新たに追加され、

さらに当時ファミ通にはクエストの前日譚にあたる漫画が掲載され全俺が狂喜しました。*15
なお前日譚漫画は新世界樹シリーズの資料集に収録されており、ありがたい事にこれも電子版があります。

エストの内容自体はありきたりな討伐クエストですが、六花の少女においてマナリィは酒に弱く、酔いつぶれてクロウドにおぶられていた事を思い出した上で受領すると更に楽しめる事でしょう。

ⅩのDLCイラスト

最新作であるⅩの早期購入特典は全冒険者が当然所持しているモノだと思っていますが。
その中の一人、金髪ガンナーはFLIPFLOPsさんの描かれたものです。


これも各所で話題を呼びました。

関係あるか微妙な話

タガタメコラボ

これは微妙に陰謀論なのですが、5年くらい前にタガタメというアプリと世界樹がコラボした際、ガンナー・パラディン・プリンセス*16が実装されたらしいのですが、その金髪ガンナーはお金が無くてトマトジュースが好きなようで、知った時ぶったまげました。

単にガンナーをコラボに出すって時に「お金が無くてトマトジュースが好きなガンナー」にする事、ある?

230709追記
www.youtube.com
該当する台詞が流れる動画を発見(厳密には4年前に見つけていたがこの記事を書いた時点では発見できなかったのを発掘した。youtubeの検索機能はゴミ、ニコニコを見習え)

終わりに

とりとめもなく書き連ねてしまいましたが、要約するとこうなります。
”必要な言葉は一つ。太古の盟約に
 基づき上帝の言葉を告げる。
 六花の少女はいいぞ!”

ご清聴ありがとうございました。

*1:Ⅴ以降ではアドベンチャーエピソードと呼称

*2:まあ昔から釣りを始めて凍った池に落ちたりはしてたけどそういうのは少数だった

*3:作中の設定では「100のパーティに1つの割合でしか到達できない」とされる3層入りを成し遂げています

*4:これモロにⅡの引退機能だな。FLIPFLOPs先生天才か?

*5:99マラソンの同キャラ引退しかした事無かったから今まで気付かなかった

*6:初期は特に終盤のどんでん返しの必要もあったからなおの事そこに凝っていた感があります

*7:鬼力化に当たるのかもなと思ったり

*8:多分これはクエストになると初期特有の特定クラス必須クエストになるんでしょうね。不評だったのでなくなってしまいましたが私はとても好きでした

*9:新1だとカースメーカー必須クエストだった「白き姫君は終末の夢を見るか」がドロップアイテムの収集でもクリア可能なように調整されており膝を打ちました

*10:ルークは虎なので…

*11:新2だと思ったよりふてえ女だったけど当時はその設定無かったですしね

*12:あとまあアントニオさんが思ったより目利きっぽい事してたかな

*13:作中時点では誰も3層を踏破しておらずエスバットも妨害活動を行っていないようなので時期的に本編より前みたいな解釈はできるかもしれませんが、その足で4層に抜けてたりフレースヴェルグなる最強ギルドが登場するので別時空と考える方がよさそう

*14:新2でクエスト名変えたの絶対に許さんからな

*15:私はもちろん名作だと思っていますが、正直コミカライズ作品のひとつからそんな大抜擢があり得るのかともう本当に感動しました

*16:ガン子、ししょー、金プリ