かぜのさかなという「神」

夢をみる島配信おめでとうございます、大変喜ばしいことです。
私は夢をみる島にはゲーム内外で色々と思い出を持ち、非常に気に入っているゲームです。
で、その夢をみる島を構成する要素の中でも何が一番好きかといわれると、まあそのシナリオというか「夢の中の世界」という世界観ですね。

プレイしていけばわかるようにコホリント島は風の魚の見ている夢の世界なのですが
あれは実体として島がどこかの海の特定の地点にあるというよりもどうも本当の意味で外界と隔絶した、*1異世界ないし結界のような場所のようで、それ故世界を運行させる法則は曖昧で、クリボーもいればカービィもいるしマップ切り替え中にセレクト…違った店員はビームを放つわけですが
そう言う破天荒な性質と別にコホリントの住人達…特に友好的な人物たちもまたかなり曖昧でおぼろげな存在だというのがまたよい。
コホリント島に生きる知的生命体は大雑把に
・リンクの道を阻む敵対的なマモノ達
・メーベ村やどうぶつ村に属する友好型のキャラクター
・システム側の存在であるフクロウ(及びうるりらじいさん?と貝殻の館?)
に分けられますが
彼らはそれぞれコホリント島という世界に対する認識や態度が異なり、
マモノ達はコホリントが風の魚の見る夢の世界でありその目覚めが世界の滅びだと認識している*2ようで
彼らはリンクを阻み自分たちの生存と世界を守るために強固な意思を持って(そして意外にも連携を取りつつ)戦っています。
あのIQ2くらいしかなさそうなデグテールですら登場時の台詞は「ンガフフ!ンガフフ!ヨソモノ!ジャマモノ!」ですし
ワンワンを攫ったモリブリンにしても彼らが敢えて村に押し入ってああした行動に出る意味はリンクに壷の洞窟を探索させないため以外にはないわけで、彼らは作中では徹底してリンクの妨害者であり、島の守護者です。*3
とりわけボス連中は話が進むにつれて「オッオメー まだ、このしまが どんなとこか、わかってねーな? キシシシッ! おひとよしなヤツ!」「”かぜのさかな”がおきちまったらみーんな、きえちまうんでげすよ!しまのものは、みーんな、ほんと。」など明白に世界の構造とリンクの関係を把握している様子さえ見せる。*4
フクロウはあれこれ言ってましたが知性あるマモノ勢がどの程度島に対して有害かは微妙な所で、
モリブリンはワンワン誘拐過程において他に被害を出していませんし、他のマモノたちも「タマゴの前で歌う」という許されざる暴挙に出たマリンを結局直接抹殺まではしないなど基本的に人間に対しては優しい傾向が見て取れます。
そもそも魔物たちが大発生するようになった事自体「ただ、あなたが しまにきてからかいぶつたちが、このあたりにも ウロウロするようになったの。」とあるようにリンクの漂着以後で、恐らく彼らはシャドーが夢という世界を利用して故意に生み出した防御要員であり、具体的な野心は有していないのではないかと思われます。
*5

で対する友好型のキャラクターはどうかというと、*6彼らはまさに夢の住人と言っていいあっぱらぱーな存在でして、世界が夢だという事に気づくこともなく、夢の中という時空に不自然なく馴染んでいます。
終盤世界の真実を知ったリンクの問いに対して「えっ?おいらたちは、いつからこのしまにすんでるかって…?”いつ”ってなんだろ?そんなこと、わかんねえや。」とのたまう者すらいる。それはいつも聞きなれた「こどもだからわかんねーや」ですらない。
だけどその中に、あの恐ろしい滅びの歌を知るマリンが紛れている。
マリンはメーベ村の住人としては完全に異端者というか異常者で、島の外に何があるのかという問いを抱き、「このヤシの実はどこから来たのかな」と呟きます。
タリンは彼女に島の外には何もないと教えていたようですが*7、彼女は段々と「島の外」という考えを深めていき、リンクが島の外に出ていくことを悟り、そしてタマゴの前で歌うのです。
彼女があの歌の性質をどこまで知っていたか、本当にただ願うために歌ったのかは不明ですが、私はリンクの知らないうちにマリンがタマゴの前で歌っていたという展開ががすごい好きで、彼女もただの夢に沿った登場人物ではないのだなと感じ入ります。
ある意味では彼女はマモノ的で、ただ対極にあるのかもしれません。

そしてそういう風に…役に殉じたり逆に自我を持ったりしながら…生きている者たちの上に*8風の魚が存在します。
彼は夢の世界ができた時の事を懐かしくリンクに語り、しかし夢は覚めるものでそれが自然の定めなのだと諭し目覚めによってコホリントを消し去るのです。


それはシャドーが恐れに恐れていた島の消滅で、まあ消される側にとっては一切容認できない事象なのだろうと思いますが、
風の魚の視点はより高いというか、神を自称したシャドーよりなお神的で「そして……キミはいつかこの島を思い出すだろう この思い出こそ本当の夢の世界ではないだろうか?」という言葉をかけてもくれる。
有終の美とか言うのかしら、まさに夢の終わりというか、滅びを受け入れたロウラルと大分似た所があると思います。
そしてあんな風に島を消してしまう一方で彼(?)はタマゴの中でマリンの声をきちんと聞いていて(「願った」ことを知っていて)、最後コホリントの神として彼女の願いをかなえてくれるというのがすごい神らしくていいというか、彼が目覚めによって消してしまうあの世界にちゃんと愛情を抱いていた証明のように思えて好きです。*9


なんか気がついたら思ったより支離滅裂でマリンちゃん推せるみたいな文章になっちまった。
いや私があの世界で一番好きな登場人物は風の魚ですよ。魚だけど。クジラだけど。
とりあえず皆風の魚を崇めようぜ。
後で確認したら似たようなことに注目したまともな記事があったので駄文を読んでダメージを受けた眼をこちらで治されるがよろしい→「ゼルダの伝説 夢を見る島」 について

 

*1:フクロウが「コホリントは地図には決して乗らぬ島」と述べた通り

*2:少なくともそう思って風の魚を封じているシャドーに統べられている

*3:一見すると背景を考えずに「あの顔じゃそういうことやるわなw」と思ってしまいがちなのがうまいと思います。

*4:アングラーだけは本当に知性なさそうですが

*5:ちなみにデータには微妙にシナリオが変更された形跡がありフクロウとボス達は互いに認識しあっている感じだったっぽいです

*6:マモノたちがイレギュラーな存在であることを考えると彼等こそが本来風の魚にとって望ましい登場人物だったのだと思われるのですが、それ故

*7:それが諭すためなのかタリン自身本当にそう思っていたのかわかりませんが、マリンが誘拐されたタルタル山脈に偶然迎えに来て会話を中断した事を考えると、多分島の性質を彼も知っていたんじゃないだろうか

*8:というか根源に

*9:今思うとクジラの姿をした神という部分以外にこの辺の物語構造も夢幻の砂時計にかなり似てますね